鉄道模型の線路有効長

 フル編成!憧れの列車を実物と同じように組成する。鉄道模型をやる人ならフル編成は列車組成において究極の目標だと思います。最近はセット販売が中心なので単品販売の頃の昔に比べフル編成は珍しいことではなくなってきましたが、フル編成の甘い誘惑とは対照的に現実は厳しいと思っています。今日はそんな話をしたいと思います。

 実際私自身もNゲージ時代はフル編成を基本としていましたが、現在16番では少し難しいかなと思っています。特に国鉄時代の幹線特急を再現しようとしますと何とかホーム有効長を確保しても駅構内が広くなりすぎて、たとえNゲージでも6畳間を潰しても殆どが駅構内ということになってしまいます。

■ まずはホーム有効長を考えてみます

 ヘッドマークが絵入りになり、まだ東北、上越新幹線が開通していない53.10頃から57年位迄が特急電車の一番輝いていた時代ではないでしょうか。編成には食堂車が必ず連結され、グリーン車も当たり前、列車によっては2両連結されていました。この時代の特急電車というと大体が13両編成でした。またブルートレインは電源車、A寝台車、食堂車を含む14両編成を機関車が牽引する15両編成が一般的でした。

 これを仮にNゲージで再現するとなるとどうなるでしょうか。例えば583系13両編成を再現するとしてカタログから寸法を調べると137mmX11両+140mmX2両=1787mmこれが13両編成の全長となります。ほぼ畳一畳の長手方向の長さ、筆者の身長より長い寸法です。

 待避線を設けないいわゆる「停留所」(転轍機が無い、場内信号機や出発信号機が無い閉塞区間内にある駅)ならレイアウトにこの長さのホームを設ければよいので、畳一畳のレイアウトでも線路の半分が駅になりますが、一応駅は設置できそうです。しかし転轍機が存在し場内信号機や出発信号機が設置された「停車場」になると話は変わってきます。

■ 停車場になると5m程度の線路長が必要?

 まずはホーム有効長1787mmは停留所と同じです。しかしこのホーム長は転轍機の接触限界の内側になければなりませんのでポイントの番数によっても変わってきますが、それより長いスペースが必要です。

 更に停車場の場合転轍機の手前に場内信号機を設置しなければなりませんが、場内信号機は転轍機の100m(1/150換算666mm)手前に設置しなければならないという規則が追い打ちをかけてくれます。100m(1/150換算666mm)は車両5両分の長さです。

 畳一畳(1800X900)に敷いたエンドレスにこの規則通りに場内信号機を設置した場合、恐らく先頭車が次の駅の場内信号機に差し掛かっても編成のほとんどがまだ前の駅の停車場内にいるという現象が起こると思います。

 Nゲージは長編成を走らせやすいと言いますが、畳一畳は少し広めの学校の校庭程度なので13両編成の特急が規則通りに走る空間を作ってあげることは6畳間を潰してもなかなか難しいことがご理解いただけるかと思います。

 更に残酷な条文を持ち出してくると「建築規程第34条」で甲線(東海道本線や東北本線など大動脈の路線)の有効長は380〜460mと規定されています。この長さに接触限界から転轍機の先端の距離、転轍機先端から場内信号機までの距離が加わりますから模型換算で4.5m~5m位の線路長が必要になります。畳一畳で遊べるというのがNゲージ発売時のコンセプトでしたが、畳一畳では法規の前にフル編成は幻想というのも事実なのです。

 これは国鉄時代の話ですが、JRになり特急は短編成になり、ブルトレは消滅し旅客列車はフル編成は組みやすくなりました。しかしコンテナ列車は逆に長編成化が進んで現在では26両という編成が存在します。単純に1両20mとして有効長だけで5.2m必要になります。ざっと計算して駅構内だけで模型換算6.5m~7m位の線路長が必要になる訳です。

 ある程度実物の知識を勉強してそれを模型に取り入れるのは面白いことなのですが、程々にしておいた方が良いという話ですw。

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