青函連絡船出航時の船橋機器操作要領④(Ring Up Eengine)

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 連絡船の出航操船要領ですが、いよいよ最終回です。前回可変ピッチプロペラについてお話ししましたが、ここは船長の指示に従って上げていくだけなので今回は三等航海士の他の仕事についても書いていこうと思います。

 これまでお伝えしたとおり、三等航海士はプロペラやバウスラスターの制御の他、艫(とも)の二等航海士や艏(おもて)の一等航海士に船長の指示を伝えたりするのも仕事です。また航海日誌を書くのも三等航海士の仕事ですが、この忙しい出入港時に写真の様な航海日誌を記帳する余裕はありません。

 そこで赤矢印部分に「スタンバイブック」と呼ばれていたメモ帳を置いておき、操船時の時刻や内容をメモしていました。他の商船では「スタンバイブック」ではなく「ベルブック」と呼ばれています。Amazonでも汎用の物が購入出来ます。


BRIDGE BELL BOOK

 昭和63年夏の臨時運行時に函館発の4便で私がスタンバイブックと同様の方法でメモ帳に記載したものです。数字と記号だけで何を書いているか普通の人には分からない内容ですが、下の表の様な意味になります。

時間 記 事
14:15:00 レッコーショアライン(出航)、バウ(スラスター)・ライト
14:15:30 スローアヘッド・ツーエンジン
14:17:00 バウ・ニュートラル、ハーフアヘッド・ツーエンジン
14:19:00 バウ・ストップ、フルアヘッド・ツーエンジン
14:19:30 翼角15度
14:21:00 翼角18度
14:22:30 4号ブイ通過
14:23:00 翼角20度
14:25:00 2号ブイ通過
14:27:00 港口通過
14:32:00 Ring Up Eengine
14:35:00 CPPを左23度、右23.5度に設定

 港内は船も多く神経を使いますが、港口を出て暫くすると大海原ですから港口を出て安全が確保された段階で「リングアップエンジン」となります。リングアップエンジンは機関配置解除という様な意味になります。

 船長から「リングアップエンジン」のオーダーを受けたら「リングアップエンジン」と復唱して「RING UP」のボタンを押します。機関部が応答するとブザーが止みますので「ラングアップエンジン・サー」と報告します。RingがRangと過去形になるのがポイントです。

 リングアップエンジンと同時に三等航海士は海峡の状況を船長に報告します。数値は毎度異なりますが、下に例文を書きます。

 「それでは報告します。海峡の潮、19:41東流2.1(ノット)の上げ潮です。行会船は5便八甲田丸丸他5隻です。ドラフト(喫水)は艏5m36cm艫5m24cm、ミーン(平均)で5m30cmです。当直は私(三等航海士、他にはチョッサ(一等航海士)、セコンドサー(二等航海士)の時もある)です。

 このあと船長指示でCPPを気象状況を勘案して予め定めた角度まで上げます。上の航海では左23度、右23.5度に設定しています。

 そして操舵手は舵をオートに切り替えます(Aのレバーを左に倒して「ジャイロ」にする)。そしてBのつまみを回すと舵のクラッチが切れ舵輪がフリーになります(回しても舵が動かない状態)。

 これで出港配置は終了です、「あとは宜しくお願いします」と挨拶して船長が船橋から降りていきます(完)。


青函連絡船物語

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鉄道連絡船細見

鉄道連絡船のいた20世紀
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